book

『白き狼の息子』マイケル・ムアコック

新版エルリック・サーガも、これでとうとう最終巻。タキシードを着て気球に乗って登場したり、遊園地でアイスクリームを食べたりと、妙に現代イギリスに溶け込んでいるエルリックが微笑ましい。主役級の少女ウーナッハや人語をしゃべる狐ルニャール公など、…

六月の近刊予定、気になる本

http://www.hayakawa-online.co.jp/product/issue_schedules/book/list.html スロー・バード 924円 イアン・ワトスン(著)刊行日: 2007/06/10 〈ハヤカワ名作セレクション〉イアン・ワトスン傑作集〉英国SF界に燦然と輝く鬼才ワトスンが、あなたを驚異の旅…

五月の近刊予定、気になる本

http://www.hayakawa-online.co.jp/product/issue_schedules/book/list.html 神は妄想である 2,520円 リチャード・ドーキンス(著) 刊行日: 2007/05/25 〈ハヤカワ・ポピュラー・サイエンス〉なぜ神への信仰だけが尊重されなければならないか。アメリカでは…

『最後のユニコーン』ピーター・S・ビーグル

タンポポの毛のようなたてがみと貝殻色に光る角を持つ、この世で最も美しい生き物ユニコーン。なぜ彼らは姿を消してしまったのか? ユニコーン最後の生き残りは、仲間を求めて旅に出る……。叙情的で優しさにあふれた語り口で読者を魅了し続けるビーグルの最高…

『ぼくのこと、ミッフィーのこと』ディック・ブルーナ

うさこちゃん、またの名をミッフィーの生みの親、ディック・ブルーナへの問答集。自らの半生や、創作の心構えなど、素直な言葉で綴られている。個人的にはブラックベアのイラストが載っていたのが嬉しい(ブラックベアの目が赤いのは、本の読みすぎで充血し…

四月の近刊予定から、気になる本

http://www.hayakawa-online.co.jp/product/issue_schedules/book/list.html 双生児 2,415円 クリストファー・プリースト(著)刊行日: 2007/04/25 〈プラチナ・ファンタジイ〉〈英国SF協会賞/クラーク賞受賞〉第二次大戦の飛行兵J・L・ソウヤーの回想録に…

『影よ、影よ、影の国―怪奇とファンタジーのスタージョン傑作選』シオドア・スタージョン

80年代に登場し、あっという間に消えた「ソノラマ文庫海外シリーズ」から出ていたスタージョンの短編集。絶版になって久しい本だが、某離島の古本屋にて100円で入手した。収録作品は「影よ、影よ、影の国」「秘密嫌いの霊体」「金星の水晶」「嫉妬深い幽霊」…

『不思議のひと触れ』シオドア・スタージョン

日本でのスタージョン再評価を決定付けた作品集。どうして今までスタージョンを読んでこなかったんだろう、と後悔さえ感じるほど、粒よりの短編ぞろい。個人的には「もう一人のシーリア」「不思議のひと触れ」「孤独の円盤」に心を打たれました。 高額保険 …

『つっこみ力』パオロ・マッツァリーノ

『反社会学講座』の著者による第三作。 メディア・リテラシーには、四角四面な論理じゃなく、愛あり勇気あり笑いありの「つっこみ」こそ有効、という主張。ここらあたりは、いわゆる「ニセ科学」に対して、真正面からの否定より「と学会」的なやり方のほうが…

橋本治はやっぱりイイ

最近、橋本治の『ひらがな日本美術史』シリーズを図書館で読んでます。と言っても最初から通して読んでるのではなくて、ぱらぱらと、気を引いた記事だけをピックアップして読んでるんですが。 最初にこの人にハマったのは、大学生になってからだったかな。そ…

『SFが読みたい!2007年版』SFマガジン編集部編

毎年恒例のSF年鑑。今年の海外編ベストは『デス博士の島その他の物語』で、これはまあ、納得。単に「長い」とか「重い」とか「複雑」とか、そんなモノじゃない、読み応えありまくりの短編集だった。その他ベスト10内だと『グラックの卵』『ベータ2のバラッド…

『スクレイリングの樹』マイクル・ムアコック

エルリック新三部作も二巻目。今回はアメリカ大陸を舞台に、ウーナ、エルリック、ウルリックの三人を主人公に物語が進行する。 時間も空間も混乱した世界で、三者三様の視点から語られる物語が、カットアップ的に絡み合っていくところが面白い……と言いたいと…

早川、創元三月の近刊から、気になる本

http://www.hayakawa-online.co.jp/product/issue_schedules/book/list.html ヤモリの指 2,310円 ピーター・フォーブズ(著) 刊行日: 2007/03/25 〈ハヤカワ・ポピュラー・サイエンス〉モルフォ蝶やヤモリなど自然の生物にインスパイアされた科学技術は、単…

『ターシャ・テューダーの人生』ハリー・デイヴィス

NHKスペシャルなどで紹介され、日本でもその独特の生活が注目されているターシャ・テューダー。見事なイギリス式庭園に囲まれた家で、19世紀的な生活を続けていることで有名だが、この本は、長年彼女のエージェントをしていた筆者による、絵本作家としての面…

『細野晴臣インタビュー The Endless Talking』細野晴臣、北中正和

この度YMOが復活するので、というわけでは無いのだが、北中正和による細野晴臣インタビューを読んでみた。元本は永らく入手困難だったが、これは一昨年に平凡社ライブラリーで復刊されたもの。 子供時代の思い出から始まって、はっぴいえんどやYMO、ソロ作な…

『奈良美智―ナイーブワンダーワールド』NHK「トップランナー」制作班、KTC中央出版・編

前半は彼の絵と短い言葉を見開きに並べた構成、後半はNHKの番組「トップランナー」でのインタビューをまとめた本。 それにしても、どの文章も、いかにも「芸術家」の仰る言葉という感じで、想定内というか、驚きも、発見も、何も無い。「感性」とやらに誇大…

『願い星、叶い星』アルフレッド・ベスター

河出の奇想コレクションから出たベスターの短編集。 既に『分解された男』『虎よ、虎よ!』は読んでいて、特に後者の方は自分のSFオールタイム・ベストの一つなのに、短編は読んだ事が無かった作家。今回まとめて読んでみると、思ったよりも新鮮な印象にちょ…

『人形アニメーションの魅力 ただひとつの運命』おかだえみこ

映画評論家、おかだえみこによる人形アニメの紹介とエッセイの本。帝政ロシア時代にリアルでグロテスクな昆虫アニメを作ったスタレーヴィチ、彼から始まる、世界の人形アニメの歴史と代表作品を一望することができる。 自分がこの著者を知ったのは、鈴木伸一…

『賢くはたらく超分子』有賀克彦

超分子とは、共有結合(一般的な分子を形成する力)のような強い力ではなく、もっと緩い力で特定の形をとったり、複数の分子が組み合わさったもののこと。それぞれ特徴的な立体構造を生かして色々な働きをするので、ナノテクノロジーの基礎技術ともなりうる…

『ひとりっ子』グレッグ・イーガン

日本オリジナル編集によるイーガン第三短編集。今回もまた、傑作ぞろい。「真心」「ふたりの距離」「オラクル」以外は既読だったけれども、再読しても面白さは変らなかったのは、さすがだと思う。 行動原理 妻を殺されたものの、どうしても復讐に踏み切るこ…

早川、創元他二月の近刊から、気になる本

http://www.hayakawa-online.co.jp/product/issue_schedules/book/list.html SFが読みたい! 2007年版 735円 SFマガジン編集部編(著) 刊行日: 2007/02/10 〈年間ベストSFガイドブック最新版(書籍扱い)〉年間ベストSF発表、飛浩隆・浅倉久志インタビ…

『カイアシ類・水平進化という戦略―海洋生態系を支える微小生物の世界』大塚攻

微小甲殻類であるカイアシについて、その系統や進化、生活史から生態系における役割まで、幅広く解説した本。もっともそんな生物、名前も聞いたことの無い人が多いかもしれない。淡水にすむものは、ケンミジンコという名前の方が通りが良いが、それでも知名…

『軌道エレベータ―宇宙へ架ける橋』石原藤夫・金子隆一

赤道上空約3万6千km、静止軌道を周回する衛星は、公転周期が地球の自転周期と一致しているため、見かけ上、天の一点に留まり続けることとなる。さて、この静止衛星から地上へ向けて、長いケーブルを垂らしていくこととする。もちろんそのままでは地球へ落下…

本バトン

スカポン太さんから「本バトン」が回ってきました。病気で臥せってたので回答が遅くなりましたが、一年の終わりという事もあるしこの機会に一つ、過去を振り返ってみるのも良いかも。 1.今読んでる本は? 『カイアシ類・水平進化という戦略―海洋生態系を支え…

『香水』パトリック・ジュースキント

18世紀のパリ。孤児のグルヌイユは生まれながらに図抜けた嗅覚を与えられていた。真の闇夜でさえ匂いで自在に歩める。異才はやがて香水調合師としてパリ中を陶然とさせる。さらなる芳香を求めた男は、ある日、処女の体臭に我を忘れる。この匂いをわがものに……

『キッド・ピストルズの妄想』山口雅也

パラレル英国を舞台に、パンク警官キッド・ピストルズを主人公としたミステリ連作集。自分としては、前々作『−の冒涜』を新刊時に読んで以来、久々の再会ということになる。 半重力に取り付かれた博士。ノアの箱舟を再現した富豪。完璧な庭園に己の人生を投…

早川創元その他一月の新刊

http://www.hayakawa-online.co.jp/product/issue_schedules/book/list.html 狼の一族 アンソロジー/アメリカ篇 2,100円 若島 正・編(著) 刊行日: 2007/01/15 〈異色作家短篇集18〉異色作家短篇集の掉尾を飾り、全三巻のオリジナル・アンソロジーをお届…

『スノーボール・アース』ガブリエル・ウォーカー

スノーボール・アース(全球凍結)とは、極端な寒冷化により地球全体が氷に覆われてしまった状態を言う。いわゆる「氷河期」として一般的に知られるのは、マンモスなどがいた新生代のものだが、この時でも凍りついたのは緯度の高い地方だけであり、赤道付近…

『秘戯書争奪』山田風太郎

時は安政。秘書「医心方房内篇」の強奪を命ぜられた丹波陽馬と甲賀のくノ一たちは、七人の伊賀忍者と激闘を繰り広げる。しかし、伊賀忍者の指揮をとるのは丹波陽馬の恋人、雪羽であった。果たして二人の、そして秘書の運命は……? うーん、傑作とは言えないな…

『マルドゥック・スクランブル』冲方丁

第24回日本SF大賞受賞作。なんだか評価に困る本。設定的には近未来SFということになるんだろうが、重力制御や異次元との連絡なんて超テクノロジーと、ガソリン自動車や公衆電話(!)なんてものが平気で同居しているのには頭を抱えてしまう。一応、戦争関連…