『細野晴臣インタビュー The Endless Talking』細野晴臣、北中正和

 この度YMOが復活するので、というわけでは無いのだが、北中正和による細野晴臣インタビューを読んでみた。元本は永らく入手困難だったが、これは一昨年に平凡社ライブラリーで復刊されたもの。
 子供時代の思い出から始まって、はっぴいえんどYMO、ソロ作などの思い出を語っている。アルバムで言うと89年の「omni Sightseeing」まで。
 YMO期の話などは「電子音楽in JAPAN」などに断片的に再録されていたので、割と既読感のある内容。どちらかと言えば幼少期やYMO以後の話が面白い。「上の手の下町」「都会の中の自然」で育った経験が個性的な音楽作りに結びついていったのかな、と思うと楽しい。子供時代、幼少期の風景が失われていく様を、大人になってからのようにセンチメンタルな感情抜きで、むしろある種の期待感を持って眺めていた、というあたりは、だいぶ歳の離れた自分にも思い当たるものがある。何か奇妙なものが作られてるな、と思ったら東京タワーだったというところは、まんま「三丁目の夕日」の世界だが、そう言えば、細野晴臣西岸良平と同級生だったはずだ。
 「源氏物語」に朝鮮の民族音楽を引用したこと、「Esashi」での江差追分とアラブ音楽の融合、「おっちゃんのリズム」の話、パリのアラブ人の実態のあたりなども興味深い。
 細野さんらしく、このころになると大分オカルトな話が混じってくるのだが、音楽への想いの強さと、本人の飄々とした語り口が伝わってくるかのような文体に、あまり気にならない。まあ、人徳なんでしょうね。

細野晴臣インタビューTHE ENDLESS TALKING (平凡社ライブラリー)

細野晴臣インタビューTHE ENDLESS TALKING (平凡社ライブラリー)

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