『つっこみ力』パオロ・マッツァリーノ

 『反社会学講座』の著者による第三作。
 メディア・リテラシーには、四角四面な論理じゃなく、愛あり勇気あり笑いありの「つっこみ」こそ有効、という主張。ここらあたりは、いわゆる「ニセ科学」に対して、真正面からの否定より「と学会」的なやり方のほうがずっとダメージが大きかった、という例からも、十分納得できます。個人の生の実感から社会を捕らえ、独特の「話芸」と論理で納得させるやり方は橋本治を彷彿とさせる、かも。
 もっともつっこみ力の磨き方という、一番大事なことについてははっきりしないまま、後半は『反社会学講座』的な各論に入るのはご愛嬌。でも個人的にはここが一番面白かったりして。

 日本のオトナたちは、「人生にはテレビゲームと違ってリセットボタンはないんだ!」とわかった風なお説教を垂れるのを得意技としてますが、とんでもない、欧米の社会には、人生のリセットボタンがあるんです。むしろ、リセットボタンのない社会のほうが、設計ミスでしょう。アジアの果てには、テレビゲームより残酷で野蛮な経済大国があります。
(p206)

つっこみ力 (ちくま新書 645)

つっこみ力 (ちくま新書 645)

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