『影よ、影よ、影の国―怪奇とファンタジーのスタージョン傑作選』シオドア・スタージョン

zeroset2007-03-07

 80年代に登場し、あっという間に消えた「ソノラマ文庫海外シリーズ」から出ていたスタージョンの短編集。絶版になって久しい本だが、某離島の古本屋にて100円で入手した。収録作品は「影よ、影よ、影の国」「秘密嫌いの霊体」「金星の水晶」「嫉妬深い幽霊」「超能力の血」「地球を継ぐもの」「死を語る骨」。
 誰だったか曰く「SFは腐る」。たまに発酵して得も知れない芳香を放つような作品もあるが、その作者ならではの強烈な個性とかオブセッションとか、そういうのがいわば「発酵ダネ」となっているのかも知れない。でも、奇想コレクションとかに収められて、現代でも読むに耐えるものは、あくまでもごく一部のものに限られるわけで……この作品集に収められた短編も、残念ながらほとんど賞味期限切れとなっていたようである。
 『夢見る宝石』や『不思議のひと触れ』での「スタージョンらしさ」を期待していたので、なおさら肩透かしをくらったのかもしれない。40〜50年代的なアイデア・ストーリー中心のセレクションで、こういうのは古びやすいんだよなあ。編者(仁賀克雄)の趣味なんだろうけど……。
 中では「金星の水晶」が、ちょっと心に残った。内向的な人が体育会系だらけの環境で苛められる、というシチュエーションが『不思議のひと触れ』収録の「閉所愛好症」を思わせる。スタージョンらしい、ナイーブさへの共感が見られます。

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