『願い星、叶い星』アルフレッド・ベスター

 河出の奇想コレクションから出たベスターの短編集。
 既に『分解された男』『虎よ、虎よ!』は読んでいて、特に後者の方は自分のSFオールタイム・ベストの一つなのに、短編は読んだ事が無かった作家。今回まとめて読んでみると、思ったよりも新鮮な印象にちょっとびっくりした。もちろん、メインとなるアイデア自体は使い古されてると言うか、やっぱり40〜50年代SFだな、というものが多いのだけれども、ちょっと捻ってあったり、文体がとてもビビッドなので気にならない。料理の仕方、盛り付け方次第でこんなに印象が変わるんだな、と感銘を受けた。
 集中のベストは、やはり「ごきげん目盛り」。繰り返しの多い、リズミカルかつニューロティックな文体自体が、落ちに効いてくるという楽しさ。
 他、名作と言われるだけの風格を備えた「イブのいないアダム」、奇怪な発想の「ジェットコースター」「選り好みなし」、お話自体は良くあるアンファン・テリブルものなのに、ラストの悪夢的なビジュアル・イメージ一つで名作に化けた表題作「願い星、叶い星」と、どの作品も独特の味があって楽しいです。

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