『ターシャ・テューダーの人生』ハリー・デイヴィス

 NHKスペシャルなどで紹介され、日本でもその独特の生活が注目されているターシャ・テューダー。見事なイギリス式庭園に囲まれた家で、19世紀的な生活を続けていることで有名だが、この本は、長年彼女のエージェントをしていた筆者による、絵本作家としての面に焦点を当てた評伝。
 原題は"The Art of Tasha Tudor"で、その名の通り彼女の絵が多数収録されている。どのイラストも可愛らしいが、やっぱり彼女自身の愛犬でもある、コーギーの絵が一番キュート。絵本「コーギビル」のシリーズは是非読んでみたいものだ。
 長年苦楽を共にしていた筆者だけあって、彼女の頑固な……いや、むしろ偏屈といってもいいかも知れない性格についても、愛情を込めた筆致ながらも、隠すことなく書いてある。もっとも、そのあたりはテレビを見ていてもある程度感じ取れてはいたし、またこういう性格でなければあのような浮世離れした生活を続けられないだろうな、とは思うのだが。
 ところであの19世紀風な生活、親や祖父母から受け継いだ先祖代々の伝統を守ってるのだろう、と、なんとなく思っていたのだが、それは勘違いだった。あれは彼女が幼少期から本や絵で憧れていた生活を、大人になってから実現させたものなのだった。あの庭は、ある種フィクションの世界を具現化させたものと言えるのかもしれない。
 あと、ちょっと面白い話。彼女のイラストでは、いわゆる「ピーター・ラビット風」な、描線はリアルだが人間風のポーズを取る動物たちが多数登場する。これをどうやって描いているか。
 ……実は、彼女はネズミなどの動物の屍骸を、多数冷凍庫で保存しているのだが、それを解凍して、半生の状態でポーズをつけてスケッチしているのである。なるほど、このやり方は思いつかなかったなあ。

ターシャ・テューダーの人生

ターシャ・テューダーの人生

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