『西遊記4 円の巻』藤原カムイ

 中野美代子による西遊記全訳(岩波書店)をベースに、原典に出来るだけ忠実な形での漫画化を目指した作品。
 前巻が出たのが2000年だったから、実に5年ぶりの刊行!もう放置されたものとばかり思ってたから、たまたま書店で見つけた時は本気で驚いた。ところが帯には「完結」の文字が……。う〜ん、三蔵の弟子がやっと三人集まったばかりなのになあ。当初の目標は、年2巻刊行、10年かけて全20巻完結、というものだったはずだが、さすがに昨今の出版状況では難しかったのかもしれない。
 同じ作者による『旧約聖書』(こっちは創世記の途中で中断中……)同様、あくまでストーリーは原作に忠実(それもセリフのレベルでまで!)。それでいて独特の演出で驚かせてくれるこのシリーズ、まさに古い皮袋に新しい酒を入れるかの様な、ちょっと他に例を見ないほど優れたコミカライズ作品だと思う。それだけに、中途半端なところでの完結は残念。
 ただ、藤原カムイ自身が自分のサイトで書いてるように、西遊記で一番面白く、しかもその割にあまり知られていない部分というのは孫悟空が旅に出る前であって、そこを描けただけでも意義はあったと言うべきだろうか。実際悟空が天帝や老子、ナタなど中華オールスターを相手に大立ち回りを演じる1・2巻に比べると3・4巻はいまいち精彩を欠いてたような気がしないでも無いし。
 まあ藤原カムイ、『H2O image』みたいに中断10数年後に完結、なんて例もあるから、ひそかに期待はしてたりして。『旧約聖書』も続刊を待ってるんだけどなあ……。

西遊記 (4) (NHK出版コミックス)

西遊記 (4) (NHK出版コミックス)