『サバイビー』つの丸

 『みどりのマキバオー』のつの丸による昆虫マンガ。週刊ジャンプの連載を打ち切られた後、単行本で大幅な書き足しがあるとは知っていたんだけど、近所の本屋ではなかなか見かけることが無く、今の今までまとまった形では読んだことが無かった。
 主人公が孤児だったり、スズメバチとミツバチの戦い等、設定的には『みなしごハッチ』を思い浮かべる人も多いかもしれないけど、むしろ『ガンバ』(『冒険者たち』)の世界。デビッド・ブリンの『スタータイド・ライジング』なんかも思い出したり。基本的には、強大な敵の包囲網からの脱出劇なんだよね。とにかく敵と味方の戦力差があまりにも大きい(ただでさえ数匹でもミツバチの巣を全滅させることが出来るスズメバチが、味方の何十倍もの数で取り囲んでいる)。こうなってはもはや自らの命を守ることなど二の次、子孫を産んでくれる可能性のある女王蜂を守ることのみが唯一の希望。そして誰か一人を生かすためには、必ず誰かの犠牲が必要、という、あまりに絶望的な状況。そんな状況から、いかなる手練手管で逃げおおせることが出来るのかが、このお話の焦点。主人公が熱血タイプなんだけど、基本的に周りが冷静で、ちゃんとツッコミ役になってるのがイイ(個人的に、女王が好きだ)。おかげで主人公の突っ走った言動にも、鼻白むことなく共感することが出来るんだよね。
 キャラクターのデザインはトゥーン的で、作者の絵柄も流麗とは言いがたいけれども、演出力が素晴しいんだよなあ。特に、主人公が竹林から脱出して砲弾の様な雨に打たれるシーンの、息を飲むような緊迫感は凄い。隠れた傑作と言っても良いんじゃないかな。絵に拒否感が無ければ、是非どうぞ。

サバイビー 1 (ジャンプコミックス)

サバイビー 1 (ジャンプコミックス)

 サバイビー 2 (ジャンプコミックス) サバイビー 3 (ジャンプコミックス)