『チョコレートを食べても太らないってホント?』ジョー・シュワルツ

 科学ジャーナリスト、ジョー・シュワルツによる化学エッセイ。すっごくキャッチーな邦題なんだけど、実は「チョコレートを食べても太らない」なんて内容は本文中に無かったりする。「チョコレートはポリフェノールをたくさん含んでるんだけど脂肪分も多いから、自分は脱脂ココアを飲んでるよ」とか「空腹を抑えるために少量のチョコレートを口にするダイエットがある」なんて記述はあるんだけど。要するに詐欺タイトルというか……普段科学エッセイなんて読まない人でも、このタイトルを見て手に取った、なんてことはありそうだし、そういう意味では秀逸な邦題なのかもしれない。でも、あまり多用して欲しく無い手法だなあ。原題は"The Genie in the Bottle(壷の中の魔神)"で、懐かしのテレビドラマ『かわいい魔女ジニー』にかけたもの。
 基本的には「日常の化学をやさしく解説」という感じのコンセプト。ダイエットの本質について、ワセリンの発見裏話、テフロン加工について、ニセ科学あれこれ(特にユリ・ゲラーとの一件が面白い)など、ごくごく身近なトピックから楽しく化学を解説してくれている。一つ一つの記事も短めなので、パラパラとめくって、興味の湧いた記事から読んでも面白いかも。
 とても良く出来た科学エッセイで、アシモフやグールドなど、アメリカでの良質な科学読み物の伝統をも感じ取れる。こういうのがコンスタントに出て一般的にも評価されるのって、本当にいいね。日本でももっと……なんて思ってしまうのだけど、日本の場合科学の啓蒙書としては、エッセイよりは対談集という形式の方が好まれているのかもしれないな。南伸坊の一連の本のように。

チョコレートを食べても太らないってホント?

チョコレートを食べても太らないってホント?