『襲撃者の夜』ジャック・ケッチャム

 現代アメリカで食人族を大暴れさせた、鬼畜スプラッタ小説の金字塔『オフシーズン』の続編登場!
 ……と、いうことで、期待して読み始めたこの作品。ただ、前作と比べると心持ち大人しい印象を受ける。いや、まさかあのキャラとか、このキャラが生き残るとは思わなかったなあ。しかも読後感もなかなか爽やか……うーん、まさかケッチャム作品の感想で「爽やか」なんて言葉を使う時が来るとは。
 なんて書くとつまらなそうだけど、そこはケッチャム、一定水準のゴア・シーンはちゃんと用意してあるし、リーダビリティも抜群。前作は『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』を連想したけど、さしずめ本作は『悪魔のいけにえ』かな。
 ただ、前作の感想にも書いたけど、一見果てしなくアンモラルに見えるケッチャム作品も、その底には一種の倫理観のようなものが仄見えていた訳で、まだ未読だけど、『老人と犬』の粗筋なんかを読むと、それは案外「アメリカ的」と言って良いものなのかもしれない。そのあたりがストレートに出ると、本作のように割と肯定的な筆致になるのだと思う。個人的には、ケッチャムのそういう側面も好きですな。

襲撃者の夜 (扶桑社ミステリー)

襲撃者の夜 (扶桑社ミステリー)

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