『シン・シティ ビッグ・ファット・キル』フランク・ミラー

 フランク・ミラーの代表作で、つい最近映画化もされた作品。前作「ハード・グッバイ」邦訳を読んだのは、ビクター・ブックス版だったので、もう十年近く前のことになるのかな。
 黒一色の画面を切り裂く雨。岩を削ったかのような、荒々しいタッチのキャラクターたち。ヒーローコミックよりも「現実的」な、しかしどこか夢幻的な舞台設定。当時はそれなりに斬新さを感じたコミックだったけれども、今見ると陰惨さばかり印象に残るのは、なんでなんだろう。基本的にフランク・ミラーの悪趣味ギャグは好きなはずなのに(あまり評判が良くないらしい「ダークナイト・ストライクス・アゲイン」も大好物だったのに)。
 掃き溜めのナイトを気取ってるかのような主人公に、まったく感情移入できなかったのも、つまらなかった原因なんだろう。タイツを穿いたスーパーヒーローに代表される、アメコミ独特のキッチュさが除かれてしまったために、剥き出しになったマッチョさに耐えられなかったのかもしれない。
 その暴れっぷりに期待してた女殺し屋・ミホも、意外と活躍せず、あまりキャラも立ってないのが残念。もっとも素っ裸でタールの池に潜るシーンは良かったけどね!

シン・シティ:ビッグ・ファット・キル (JIVE AMERICAN COMICSシリーズ)

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