『SFベスト201』伊藤典夫 編

 出版社による公式サイト
 1970年代から2000年までに出版された中より厳選した、201冊の翻訳SFを紹介したガイドブック。
 各作品1ページほどの長さながら、それぞれの紹介者のスタンスがはっきりした「濃い」紹介文は、読み応えがあって素晴らしい。また、伊藤典夫による前書きも、翻訳SFの第一人者としてSF史を総括する力作。安っぽい装丁が癌となっているけれど、中身自体は初心者からマニアまで十分に楽しめる、良書に仕上がっていると思う(それにしても早川から出てた『SF入門』といい、この手のSFガイド本の装丁が総じて酷いのは何故なんだろう。大森望の『現代SF1500冊 回天編 1996‐2005』は悪くなかったが)。
 本書のもともとの編集意図としては『総解説 世界のSF文学』の増補版的なものを目指したものだったようだ。そのためか、この手のガイドブックに良く挙げられるような、50・60年代の名作SFは取り上げられていない。その分は「知られざる良書」のために割いている、という感じか。実際個人的な感覚としては、90年代前半くらいまで、要するにネット以前は、チャンネルが限られていたため、どうしても偏った情報しか受けることが出来なかったように思う。例えば『人生ゲーム』(D・G・コンプトン)などは、当時のSFマガジンの書評からはつまらなそうな印象しか受けなかったのだが、こうして森下一仁の紹介文に触れてみると、見る間に読む気が湧いてくるではないか。
 と、言うわけで本書を読んで、改めて読みたくなった本をメモしてみる。こうしてみると、プロパーSFで目ぼしいのは、大体フォロー済みだが、周辺文学・スリップストリーム系の作品に取りこぼしが多かったんだなあ、という印象。
『銃、ときどき音楽』(ジョナサン・レセム) 『蟻』(ベルナール・ウェルベル) 『器官切除』(マイケル・ブラムライン) 『テラプレーン』 (ジャック・ウォマック) 『香水』(パトリック・ジュースキント) 『エリアンダー・Mの犯罪』(ジェリー・ユルスマン) 『ウィンターズ・テイル』(マーク・ヘルプリン) 『マラキア・タペストリー』(ブライアン・W・オールディス) 『氷』(アンナ・カヴァン) 『樹海伝説』(マイクル・ビショップ) 《野獣の書》三部作(ロバート・ストールマン


はてな年間100冊読書クラブ 17/100)

SFベスト201 (ハンドブック・シリーズ)

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