『萌える男』本田透

 この著者のサイト「しろはた」は昔良く見ていたので懐かしく、出張ついでに飛行場の売店で購入、飛行機の中で一気に読んだ。
 オタクの女性性とか唯幻論云々については、例えば富沢雅彦が20年も前に言っていた様な言説で(例えば、こことか参照)、特に目新しさは無い。オタクの端くれだった人間としては、なんとなく心地良い物言いであることは確かなんだけれども。
 「恋愛出来ない者は人に非ず」的な現代の風潮に対する違和感には、大いに共感した。しかし正直、例えばゲームなどの形で、空想の世界でまで恋愛を乞い求めたりする心情は自分には理解できない。これは自分がいわゆる「反-恋愛資本主義者」では無く、むしろ「反-恋愛至上主義者」だからなんだろうな、とは思う。そんなに良いものか?という。
 この本の主題は、要するに「自助」ということになるのだろう。「萌える男」である自分をまず肯定しましょう、という提案は良い事だと思う。しかしそれが「自分を助けてくれなかった社会」へのルサンチマンから始まるものならば、行き着く先は、ある種の堕落なんじゃあなかろうか。実際、いくつかのサイトに見られる女性憎悪的な言説は、その証左であるようにも思える。

萌える男 (ちくま新書)

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