『人間の本性を考える−心は「空白の石版」か』スティーブン・ピンカー

人間の本性を考える ~心は「空白の石版」か (上) (NHKブックス)
 上中下3巻の大部なので、現在読んでる途中だけどちょっとメモ。すごく面白い。
 要するに「人間の性質に与える影響は、教育よりも遺伝の方が遥かに大きい」と言う本。読む前は「そんなの当たり前じゃん」などと思っていたが、いやいやどうして、そんな甘い話じゃあ無かった。「心は空白の石版(ブランク・スレート)だ」という考えがいかに社会に根付いてしまっているか、そしてその驚くべき弊害を著者は次々と指摘してみせる。
 個人的に一番ハッとしたのは「狩猟採集民族は実は好戦的で、戦争による死者も、人口比で考えれば恐ろしく高い」というデータ。日本でも「縄文時代は平和だった」というのが一般的な考えだけど、果たしてどうなんだろうか。確かに大規模な戦争は弥生時代から始まったかもしれないけど、単にそれは量的なスケールアップの結果だったのかもしれない。……自分たちもやはり「空白の石版」説に基づく「高貴な野蛮人」というバイアスの掛かった考えに染まっていたのかも。
 あと、スティーヴン・J・グールドとリチャード・ドーキンスの論争を政治的なイデオロギーの対決として解説してあったのには少し驚いた。けど確かに納得。この二人の大きな論点の一つは「種」の重要性をどのように見積もるか、ということだと個人的には思ってるんだけど、これを政治的な視点から見ることも出来るとは。あと、むしろ「ラディカル」というイメージなのはドーキンスだったので(単に学説からのイメージだけど)、ラディカル・サイエンティストとしてグールドが挙げられていたのにも目から鱗だった。