『ドラえもんカラー作品集第5巻』藤子・F・不二雄

ドラえもんカラー作品集 (5) (てんとう虫コミックススペシャル)
 久しぶりに出たカラー作品集は、初期作品編と銘打って1970年代初頭の作品ばかりが集められている。当然てんとう虫コミックス未収録作品ばかり。自分みたいに『藤子不二雄ランド』版を持ってないものには、ほとんどが初見のものばかりだ。
 それにしても超初期ののび太って、本当におっとりしていて可愛いんだよなぁ。まぁ、やがて1973年(ねん力目薬)にもなると、すっかり妙な知恵が付いちゃって
(目で見ただけで物を動かせると断言して)「よし!見せてやる」「もし、できなかったらめちゃくちゃになぐっていいよ」→「ぼくがなぐられてもいいの?」「やくそくしたんだぞー」「かしてくれ」→「けっきょくは かしてくれるんだから……」と、いつもののび太、これでこそのび太になってしまっているのだが。
 収録作品中、一番インパクトがあるのは「ネンドロン」だろうか。物体を柔らかくするネンドロンの話。調子に乗ったのび太が町じゅうの物をひん曲げてみせるコマは、ほとんどサルバドール・ダリの世界でシュール。満面の笑みを浮かべて「なんでものばしちゃうぞ」なんて言ってるのび太も凄い(ドラえもんのび太をいさめるどころか、協力してネンドロンを振り掛けまくっている。この頃はドラも騒ぎを起こす側だ)。で、最後にスネオのママがネンドロンを使って顔を整形しようとするが、ここは当然失敗する訳で……この時のメチャクチャに崩れた顔も物凄いが、「お前もおばけにしてやるざます」のセリフが怖すぎる。
 あと、「タイムマシン」は実質6ページしか無い話なのに、タイムトラベルを絡めた謎という少しややこしい話を展開してて、それでいて低学年の読者にも十分理解できる様な描きかたになっている。ちょっとこの完成度はとてつも無いものがあると思う。