『トリポッド2 脱出』ジョン・クリストファー

トリポッド〈2〉脱出 (ハヤカワ文庫SF)
 トリポッド2巻目にして、オリジナルシリーズの開幕。前巻から時は流れて数世代。大人になると精神を操作する「キャップ」を被り、唯々諾々とトリポッドの支配を受ける人類の文明は既に中世レベルにまで退行していた。そんな環境に疑問を持つ少年ウィルは、放浪者オジマンディアスに出会ったことから、自由人の砦「白い山脈」への長く辛い旅に出る事を決意するのであった・・・・・・。
 う〜ん、面白い。ジュブナイルらしく描写不足気味なところも見受けられるが、全体的な視点はあくまでシビア。特に美少女エロワーズとの出会いと別れの辺りは読ませる。大人の秩序に疑問を持ち、自由意志の実現を求めて、安穏とした生活から旅に出る少年、というのは古典的ジュブナイルの定番だけど、そこはそれ、やはり定番ならではの力というものがある。もっとも現代に生き、オトナになってしまった者の視点としては「そもそも自由意志とはなんだろうか?」という疑問も湧かないではないが・・・・・・それをこの小説に求めるのはお門違いだろう。
 それにしても訳者あとがきの「アンジェラをもー一回出せー」には笑ってしまった。うんうん、そうだよなぁ。確かに前巻ではアンジェラに萌えたよな!