『山田風太郎忍法帖短編全集9 忍法聖千姫』

9巻 忍法聖千姫 山田風太郎忍法帖短編全集 (全12巻) (ちくま文庫)
女性って怖い、という話ばかり集まってる本集(まぁ山風の小説の6割方くらいはそういう話だが)。やはり白眉は表題作だろうか。表紙の、山本タカトによる千姫のイラストが美しい。スカトロジーとグロテスク極まる物語の果てに、なおも嫣然と微笑む千姫の姿は強烈な印象を残す。オチの忍法は、前集に収められた「ガリバー忍法島」の応用バージョンだろうか。
「忍法ガラシャの棺」「忍法瞳録」も、女性の不条理さ、そして破滅していく男を描いた短編。死と官能性に彩られた、それ故に恐ろしく魅力的な話。
「忍法幻羅釣り」は珍しく、凡作。なんか間延びした印象。逆に「忍法穴一つ」は短いものの、最後のアフォリズムに至るまでビシッと決まってる。この忍法が対象器官(笑)に及ぼす影響を、真剣に考察してしまった。