『トリポッド1襲来』ジョン・クリストファー

トリポッド 1 襲来 (ハヤカワ文庫 SF)
 突如地球に降り立った謎の三本脚機械「トリポッド」。やがて世界中にトリポッドの崇拝者が現れ、人々はパニックに陥っていく・・・・・・。破滅SFの名作『草の死』で有名なジョン・クリストファーによるSFジュブナイル。お得意のディザスター小説のフォーマットで、主人公の少年とその家族、友人達がトリポッドの侵略と戦っていく様子が描かれる。
 トリポッドのデザインは『宇宙戦争』のウォー・マシン、ネーミングは『トリフィドの日』を意識してるのかな?いかにもイギリスSFというか、派手な戦闘描写があるわけでも無く、粛々と人類は侵略されてしまう。故郷よりの脱出から最後、一面の銀世界を舞台としたささやかな勝利劇に至るまで、モノクロームの落ち着いた印象は、まさにこの国の伝統、という感じ。でも、西島大介のポップで可愛いイラストも、意外と良く似合ってるのが面白い(せっかくの白背SF文庫なんだから、カラー口絵も付ければ良いのに。……まぁ、西島大介の画風だと、あまり意味無いかも知れんが)。
 読み終わって、自分が子供の頃夢中になって読んでた、児童向けSFの数々……例えば『光る雪の恐怖』や『堕ちてきた月』……を思い出した。ハヤカワSF文庫って、あまり子供が手に取る叢書では無いかも知れないけれど、是非、現役の小学生達にも読んでもらいたいな。
 実を言うと、イギリスの破滅SFって結構好きだ。ウィンダムの一連の作品しかり、『グレイベアド』しかり、バラードの破滅3部作しかり。『トリポッド』が売れて、著者の大人向け小説『草の死』や『大破壊』が復刊されることを期待したい。