『Lenore』のFlashアニメ

zeroset2004-10-27

 Roman Dirge作『Lenore』の存在を知ったのは、スタジオ・ボイス誌のアメリカン・オルタナ・コミック特集(2002年1月号)だった。Gothムーブメントを担う作品の一つとして、1・2カットほどのイラストと紹介文が載っていたのだが、その時は特に興味を惹かれる事は無かった。その後スカポン太さんのサイト Read Me! GIRLS! で紹介された事があり(2002年10月22日の日記参照)この時はなんとなく気になったものの、結局はそのままになっていた。まぁ、いきなりコミックスを取り寄せるのもリスクが大きい訳だし。やっぱりね、Comixとかに立ち寄って、アメコミを立ち読みできる環境は羨ましいなっ……などと僻んでみたりして。
 それはともかく、数日前、boxmanさんのはてなダイアリーで、LenoreのFlashアニメが紹介されていた →id:boxman:20041022#p2。

『Lenore』の原作はエドガー・アラン・ポーの詩に登場する死美人レノアに材をとったブラックなギャグマンガ。基本的には死から甦った無邪気な少女レノアが様々な無茶をするのを読んで萌えるマンガである(語弊あり)。

なんかこの紹介文が良かったし、Web上で見られるという気軽さもあって、Flashアニメを観てみたわけだが……。
惚れた!
 いやぁ〜、萌える!イイ!特に声が良すぎ!仕草も可愛いし。もう、モロ、好み、この娘。原書もさくっとアマゾンに注文してしまった。
 好きなのは、マジシャンにイタズラ(なんてものではすまないが)する話と、悪夢の話、妖精の出てくる話かな。ウサギスーツが可愛すぎる。悲鳴をあげるシーンも、なんか、いいね。
 実を言うと、もっと(悪い意味で)雰囲気先行型のコミックだと思ってたんだよね。Gothカルチャーに対する偏見(と、いうか、あの自意識過剰ぶりに対する嫌悪感)もあって。でもこの作品、即物的なブラック・ギャグなのが良かった。見も蓋も無いっつーか……。実を言うと、単に露悪的なだけのギャグも嫌いなのだが、この場合、Lenoreの可愛らしさとか、ポーの作品に題材を取っているというエクスキューズが、いい感じで露悪さを緩衝してる様に思う。……まぁ、何にせよ「カワイイのは強い」ということです。要するに。
 ちなみにFlashアニメを全部見るには上記スカポン太さんのサイトのリンク頁に紹介されている lenore(レノーア)Flash保管庫 が便利。2ちゃんねるのスレとかもあって、良いまとめサイトです。

レノアとポー

 レノアはエドガー・アラン・ポーの詩に登場する少女。『大鴉』にてその名を呼ばわれ、『レノア』でその死を悼まれる。モデルはポーの妻ヴァージニアとされる。
 二人が出合ったのは、1831年。二人はいとこ同士であり、ヴァージニアは8歳だった。その五年後、13歳のヴァージニアと27歳のポーは結婚する。ポーはこの幼妻を「私の恋人、私の優しい妹、私の可愛いちっちゃな奥さん」と呼び、深く愛していたという。
 しかし数年後、ヴァージニアは当時不治の病であった結核を発病する。前述の『大鴉』や『レノア』は、肺を患った最愛の妻が死への避けられぬ道程にいた、まさにその時に書かれた詩なのである。結局、わずか24歳でヴァージニアは亡くなってしまう。以後、ポーは荒んだ生活を送るようになり、妻の死の二年後、自らも野垂れ死に同然の最期を遂げる。
 この二人の、妄執と死に彩られたイメージは、その後も様々な作家にインスパイアを与え、多くの作品に形を変えて描かれることになる。個人的に最も鮮烈に記憶に残っているのは、ルディ・ラッカーのSF『空洞地球』だ。ここに出てくる“もう一つの地球”のポーは、妻と共に密航を企てるが、船倉から出られなくなってしまい、体の弱い彼女を死なせてしまう。そして、抱きしめた妻の死体が、そのまま腐り行く様を見続ける羽目に陥ってしまうのだ。
 Roman Dirgeの『Lenore』にはMr.Goshという、Lenoreに執着する男が登場する。彼は、ポーの転生した姿なのかも知れない。