「PLUTO 1」浦沢直樹、原作・手塚治虫

PLUTO (1) (ビッグコミックス)
 鉄腕アトムの人気エピソード「地上最大のロボット」を、ロボット刑事ゲジヒトの視点からリメイクした作品。今のところ、プルートゥはイメージ的な表現でしか登場しておらず、ロボットと人間の連続殺「人」事件というオリジナルな謎を軸に話が展開している。
 ミステリー調に展開するストーリーにも目を惹かれるものの、まだ謎の端緒についたばかりの現段階としては、やはり、あの印象的なロボット達(と彼らにまつわるエピソード)をどう浦沢流にリメイクするか、ということが興味の焦点となってしまう。で、この点について、正直な所、非人間型のロボットの解釈にはちょっとなじめないところがあったり。デザイン自体は嫌いじゃないんだけど、要するに着ぐるみ的解釈なんだよね。ノース2号はまだ良いけど(それでも口の辺りが…)、ブランドの「パンクラチオン・スーツ」には、結構がっかりした。この辺りは漫画としてのリアリティというか「もっともらしさ」との兼ね合いで仕方無いというのは、理屈としては理解できるものの…それでも、もうちょっと何とかならなかったかなぁ、と思ってしまう。いかにもマンガマンガしたロボット達が「人間的」なドラマを演ずるのも、それはそれで面白い光景だと思うんだがなぁ。手塚の最大の業績は、典型的なマンガ絵のキャラクターでも、演出次第では壮大なドラマを演じさせることが出来る、という事を示したことだったはず。
 もっとも、ヒューマノイド・タイプについては、完全な浦沢絵にアレンジされているのにも関わらず、違和感を感じさせないのはさすが。ゲジヒトも良いがアトム最高。初めて見た時は「アトムと言うよりケン一じゃん」と思ったけど…。本巻にはラスト数ページにしか出てこないが、次回のアトムがまた、良いんだよなぁ。黒パンツもトンガリ頭も無くても、やはりアトムはアトムであったのだ。
 あと、ノース2号のエピソードとか、原作を読んで色々想像させられた所(主人との信頼関係とか)を上手く補完してて良い。ちょっとベタな所はあるけれど…。
 レクター博士めいたブラウ(胸に刺さったヤリや、人間を殺したロボットという設定から、青騎士を連想するが…)、高価な治療代金を取るモグリの天才医者、といった小ネタも楽しく、これからの展開が本当に興味深い。まずはエプシロンがどうリメイクされるか、気になるところだ。