「音楽図鑑 エピキュリアン・スクールのための」坂本龍一

 本本堂(発売:冬樹社)1985年。装丁は奥村靫正。ネットオークションで入手した。
 坂本のソロアルバム「音楽図鑑」に併せて刊行された、一種の絵本。マンデルブロ集合のCGやLSIの拡大写真、久保キリコのイラスト等に、浅田彰などの寄稿した文章が、読むことを拒否するようなレイアウトで散らしてある。まぁ、いかにも80年代的というか、そんな本。
 今となっては、絵としても楽しめるものでは無いし、文章も文字組みが凝りすぎていて、とても読む気になれない(文字を追うだけでも一苦労だ)。当時、書店で見かけたんだが、ページをペラペラめくってみて普通にスルーした記憶がある。その判断は今から見ても正しかった様に思う。「EV Cafe 超進化論」ISBN:4062024179未来派2009」ISBN:4893530828 はちゃんと買ってたんだけどね。こういう「ポストモダン」な雰囲気を引きずっている著作家は、今でも(しかも割りと若い人が)いるのが面白い。「実はまだうちにいるのです」(byつげ義春)という感じ…。
 ただ、巻末の「音楽図鑑」ライナーノーツのみは良かったと思う。もちろん、アルバムに一切説明書きが無いからこそ、自分で独自に抱いていたイメージはあるのだが、20年近くたった今、こうして教授が持っていた原イメージと比較することが出来るのは面白い。
 ちなみにM3「パラダイス・ロスト」は、J・G・バラード「結晶世界」をイメージしたとのこと。バラードの描いた結晶化した森の様に、俺の中でこの曲だけはいつまでも輝きを失わないだろう。