『ストームブリンガー』マイクル・ムアコック

 最愛の妻を何者かに拉致されたエルリック。魔剣ストームブリンガーを手に探索の旅に出るが、“新王国”の地は、“混沌”と手を結んだパン・タン=ダリジョール連合軍に侵略されつつあった。戦乱の渦中に否応なく巻きこまれるエルリック。だがこれらは、迫り来る“混沌”と“法”の怖るべき戦いの前哨戦にすぎなかったのだ!「魂の盗人」「闇の三王」「忘れられた夢の隊商」の3中篇と、表題長篇『ストームブリンガー』収録。
Amazon商品説明より)

 「永遠の戦士 エルリック」も4冊目、これで旧版の再刊は全て終了ということになる。エルリック・サーガは個々のエピソードの書かれた年代がバラバラなので、どうもシリーズ通したメリハリとか躍動感に乏しい印象がある。とは言え、この巻はさすがにクライマックス、物語のスケールも一気に拡大し、大いに盛り上がります。神々の顕現によって異形の世界と化した地上で展開する、黙示録的な最終戦争の描写は圧巻の一言。
 それにしても不幸の連続が続くエルリックの運命、その中にあって、どこか作者による底意地の悪いユーモアを感じさせられるところが、ある意味「イギリス的」で面白い(特にラッキールの死にっぷりとか)。
 さて、次巻からは未訳の新シリーズが始まる訳だが、『夢盗人の娘』という題名からして、『真珠の砦』の路線を深化させた物語となるのだろうか。個人的には楽しみ半分、不安半分といったところ。
はてな年間100冊読書クラブ 18/100)

ストームブリンガー―永遠の戦士エルリック〈4〉 (ハヤカワ文庫SF)

ストームブリンガー―永遠の戦士エルリック〈4〉 (ハヤカワ文庫SF)