『眠れぬ夜のグーゴル』A・K・デュードニー

 広告、報道、政府発表などに潜む数字のごまかし、統計に関する思い込みについて、やさしく解説する数学エッセイ。
 特に思い込みに関する話が面白かった。「株式市場は予測できない」「ギャンブルは長期的に見ると必ず損をする」など、理屈としては理解していても、感覚的に納得のいかないことは多い。例えばコイン投げでどちらかの面が出る確立は二分の一。これが理屈なんだけれど、10回連続で表が出た後では、たいていの人は再び表に賭けることを躊躇してしまう。実際には表が出る確立は、それまでと同じ二分の一なのに。これは人間の経験則的な感覚が、必ずしも現実と一致しない(要するに、一種の錯覚といってもいいかもしれない)ということだけど、これに騙されないためにも、一度立ち止まって計算してみましょう、というのが本書の主題。
 多くの欧米の科学啓蒙書の例に漏れず、本書も繰り返しが多くて記述がくどいのが難点。ただ、メディアリテラシーを磨くためにも、読んで損は無い本だと思う。

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眠れぬ夜のグーゴル

眠れぬ夜のグーゴル