『暁の女王マイシェラ』マイクル・ムアコック

 新版エルリックも三巻目、旧『暁の女王マイシェラ』と『薔薇の復讐』の合本。書かれた時期が違うため、かなり違和感のある組み合わせではあるけれど、最初の巻の『メルニボネの皇子』+『真珠の砦』ほどでは無いかな。
 『マイシェラ』は宿敵セレブ・カーナとの戦いを通じ、眠れる姫君との出会い、乞食の街ナドソコルでの冒険、永遠の戦士3人の再集結が描かれる。このあたりになってくると、さすがに少しマンネリ気味というか、とっととセレブ・カーナ始末しろよ、という気にもなってくるが……。
 『薔薇の復讐』の方は、昔読んでいたはずなのに完全に筋を忘れてて、ほとんど初読のような感覚だった。父親の魂を納めた箱を求めて、多元宇宙を彷徨うエルリックの話。
 あまり意味があるとも思えないような形而上的な討論がひたすら繰りかえされる上に、文体も難渋で、読み進めるのが結構辛い。これじゃ筋を忘れるわけだよなあ、というのが再読当初の素直な感想。
 とは言え、詩人・ウェルドレイクや、謎の女戦士「薔薇」、コルムにも出ていた「呪われし公子」ゲイナーと、脇役キャラがどれも魅力的なのは良かった。『逆転世界』を思わせる「ジプシー国」と思わず息を呑むその最期、華麗でグロテスクな混沌の神々など、異世界描写も独創的で素晴らしく、物語も半ばを過ぎるころには結構楽しみながら読むことが出来た。このあたりの魅力は、再読で初めて気が付いたところ。

暁の女王マイシェラ―永遠の戦士エルリック〈3〉 (ハヤカワ文庫SF)

暁の女王マイシェラ―永遠の戦士エルリック〈3〉 (ハヤカワ文庫SF)