『きみときみの自転車』沢村凛

きみは青い自転車にまたがっていた。それが、ぼくがきみを見た最初だった。次の日、きみはぼくのところへやってきて、言った。「どろぼう!」って。それが、きみがぼくに向けて言った初めてのことばだった。違う!ぼくはきみの自転車を、盗んでなんかいない。「きみの自転車を捜し出して、ほんとうの犯人を見つけてやる」。
(Yahooブックス書籍紹介より)

 えー、ジャケ買いです。……タイトルと粗筋にも、惹かれるものはあったんですけどね。
 『ぼくがぼくになること』という本の続編らしいのだけれども、そちらの方は読んでいない。この表紙の女の子はそちらの主人公だったようで、話が進むにつれ、その出自にちょっとファンタジックな秘密があることが分かる。もっとも基本的には、無くなった自転車をめぐる「日常の謎」タイプのストーリー。
 でも、読み終わってみるとこの女の子、印象が薄いんだよなあ。もちろんこの子の自転車を探す話である以上、お話の核ではあるんだけれど・・・・・・。主人公が木陰からこの女の子を見つめる開幕シーンが印象的なだけに、その感情が宙ぶらりんになったまま終わる感じがもどかしい。
 正直、脇役のメガネ君との間の友情をお話の軸にそなえて通したほうが、ずっとまとまりが良かったんじゃないかな、と思う。この辺、ラノベ的なキャラクター先導のお話作りと、児童文学的な要素が、うまく噛み合ってない印象がする。

きみときみの自転車 (エンタティーン倶楽部)

きみときみの自転車 (エンタティーン倶楽部)