SFマガジン4月号「海外作家ノヴェラ競作」

 海外作品のみだけど、今ごろ読了。簡単な感想を。

 今月の一番。やっぱり凄い。ウルトラスーパーハードSFという惹句は伊達じゃなく、ブラックホール内部の性質についての記述は、正直チンプンカンプンなところばかり。所詮、大昔に読んだブルーバックス程度の知識しか無いわけで。それでも読み終えた後の充実感はただ事ではないです。二度と出られないブラックホールへのダイブというSF的な仕掛けが、一人の抑圧された少女の人生に、そして「死すべき定めにあるのなら、生きる意味とは何か?」人類普遍の問いへとオーバーラップする展開が素晴らしすぎ。

 クリスマスの飾りつけ専門業者なるものを舞台にしたラブコメ。ちょっと設定変えるだけで、そのまま「アリー・マイラブ」の一エピソードになりそうな話。要するにSFとしてはどうかと……なんて言うのも野暮だよな、やっぱり。

 廃墟を見て「ここ、なんとなく飛行機みたいだよなあ」なんて思ってたら、本当に飛行機になってしまうお話。少年の奇想が現実になるシーンがイイです。すごくイイ。ずっと忘れてたけど、こんなこと、しょっちゅう考えてたよなあ。大切な友達との別れのシーンはやっぱり切ない。

 遠未来を舞台に、永遠の生の意味を問い掛けるお話。悪くは無いんだけれど、やっぱり「イーガン後」に読むと、感傷的に過ぎる様に感じるのが辛い。

 実は1873年に既にテレビが存在していた!……という奇想SF。再生するたびにドラマの内容が変わっていく、セレンを利用した"スロー・ライト"テレビというアイデア。ボブ・ショウのスロー・ガラスを思い出すが、アイデアとしてはどちらが先なんだろう。19世紀のテレビと言う発想から、メタフィクション的な展開へと繋がっていくところにくらくらさせられる。今月ではイーガンに次いで良かった。

S-Fマガジン 2006年 04月号

S-Fマガジン 2006年 04月号