『オリンポスのポロン』吾妻ひでお

オリンポスのポロン (1) (ハヤカワコミック文庫 (JA782)) オリンポスのポロン (2) (ハヤカワコミック文庫 (JA783))
 昨日の『失踪日記』に続いて吾妻作品。アニメ化もされた本作だが、掲載雑誌の制約もあって作者の他の代表作に比べると、マニアックなネタやシュールで破壊的なギャグは少ない。それでも解説で山本直樹も指摘しているように、全体的にスピーディでドライな笑いに満ちているのが、この時期の作者の特徴。畳み掛けるようなテンポに、脱力もののオチ。いやぁ、こんなに面白いとは思わなかったなぁ。昔読んだ時は、このドライさがイマイチ肌に合わなかった記憶がある*1んだが、今はこれくらい乾いてるほうがいいや。ある意味最近のトゥーンに通じるものもあると思うが、このノリをそのままアニメ化するのは難しいだろう。
 ちなみに本版にはアニメ化された際のリメイク作「おちゃめ神物語コロコロポロン」と文庫化に当たっての書き下ろし漫画が併載されている。作者の絵の変遷が良く分かって面白い。「コロコロポロン」版のポロンは、まるでななこだなあ、とか。個人的には小悪魔的なところもあるオリジナルのポロンが好みです。

*1:むしろプリンセスコミックス版に併載されていた短編「ノヴァ」とかの方が記憶に残っている。もっとも『失踪日記』によると「ノヴァ」は編集者のネームによるもので、純粋な吾妻作品とは言いがたいようだが。