『山田風太郎忍法帖短編全集12 剣鬼喇嘛仏』山田風太郎

剣鬼喇嘛仏―山田風太郎忍法帖短篇全集〈12〉 (ちくま文庫)
 忍法帖短編全集もこれで完結。去年読んだ徳間文庫版『剣鬼喇嘛仏』が元本と同じ構成のものだったので、今回未読だったのは単行本未収録だった「開化の忍者」のみ(当初のリストに無かったものの急遽収録された「筒なし呆兵衛」は『山田風太郎傑作大全(9)剣鬼と遊女』で読んでいた)。それでも十分面白く読めるのが凄い。
 それでも一番印象深いのは、やはり初めて読んだ「開化の忍者」だった。明治もの+忍法帖という夢の組み合わせ。進歩の象徴たる欧米への若者らしい憧れが、実際にそこから来た異人の不遜さに、そして女の残酷さによって、もろくも崩れ去っていく様が何とも言えない。ちなみにこの作品、オチが同作者の長編『ラスプーチンが来た』と似ている。もしかしたらこれが今まで単行本未収録だった理由なのかもしれない。
 あとは江戸川乱歩パロが楽しい「伊賀の散歩者」、男女が交合したままで戦う、というバカアイデアとラストシーンの哀切さのコントラストに唸らされる表題作が個人的ベストだった。