『トリポッド3 潜入』ジョン・クリストファー

トリポッド 3 潜入 (ハヤカワSF)
 ジョン・クリストファーによるジュブナイルSF3話目。といってもオリジナルシリーズでは2冊目にあたる。前作で自由人の住む「白い山脈」へたどり着いたウィルたち。しかし彼らに安穏な生活を送っている余裕は無い。再び長く困難な旅を経て、異星人の本拠地「黄金と鉛の都市」に潜入した彼らが見たものは……。
 相変わらず西島大介のイラストが可愛いが、そこはさすがイギリスSF、ジュブナイルと言っても容赦しないというか、明るさや楽しさとは無縁の世界が続く。主人公達のたどる運命は前作以上に過酷だし、特に都市内の描写は読んでいるこちらまで息苦しくなるかのようだ(フリッツが痛々しすぎる……)。
 前作の感想で「ジュブナイルらしく描写不足気味なところも見受けられるが」などと書いてしまったが、むしろこういう抑制された描写だからこそ、独特の余韻が生まれるのだと、本作を読んで改めて気付いた。ラストシーンでの深い感慨は、このあっさりとした、それでいて的確な人物描写ゆえのものじゃあ無いかな。
トリポッド1の感想 → id:zeroset:20041124#p2
トリポッド2の感想 → id:zeroset:20050115#p1