『山田風太郎忍法帖短篇全集11お庭番地球を回る』

山田風太郎忍法帖短篇全集11 (ちくま文庫)
収録作品:忍法死のうは一定(1970)、さまよえる忍者(1970)、怪談厠鬼(1970)、読淫術(1970)、お庭番地球を回る(1971)、怪異二挺根銃(1973)
 忍法帖短編全集もラストまであと一冊。早かったなぁ……。河出からも忍法帖長編が刊行されるようで目出度いことではあるけれど、さしあたっては既読の作品から刊行される様だ。再来月からは光文社文庫版の風太推理小説全集を月一冊ペースで読んでいこうかな。
 明治ものと忍法帖をリンクする作品が「お庭番地球を回る」。幕末の使節団たちの渡米という史実自体が無茶苦茶面白いので忍法の影は薄くなりがちかな、と思いきや最後に強烈な「忍法」で締めくくる、鮮やかな短編。でもどちらかといえば明治もののテイストのほうが強いかな。「怪談厠鬼」は、オチを怪談調にすることで、かえってピントがボケたような印象。下ネタのこだわり具合は「らしい」けど。「怪異二挺根銃」は二本の陰茎を持つ男が登場、津軽騒動を背景にした「大いなる伊賀者」の姉妹編とでも言うべき短編で、登場人物も共通している。しかしこちらは艶笑談風のオチ。ヒロインの最後の一言が可笑しくも可愛らしい。
 で、集中のベスト、その一は「さまよえる忍者」。性交した相手に乗り移る忍法、というアイデアが、グレッグ・イーガンの「貸金庫」をスケールアップしたような驚愕のラストに結びつく。そしてベストその二が(既読作品だったけど)「忍法死のうは一定」。“戦国のメフィストフェレス” 果心居士の幻術により、炎上する本能寺から脱出した信長が見た未来とは?。さすが山風のお気に入りだけあって信長は格好良いが、それ以上に『妖説太閤記』を髣髴とさせる秀吉のダークっぷり(しかも史実)が凄まじい。