『コララインとボタンの魔女』ニール・ゲイマン

コララインとボタンの魔女
Coraline (Bram Stoker Award for Young Readers)
 古い屋敷に引っ越してきた女の子、コララインは、ある日どこにも通じていないはずのドアを通って、不思議な部屋に出る。そこにはボタンの目をした“もう一人のママ”がいた・・・・・・
 『サンドマン』のニール・ゲイマンによるファンタジー。ハリポタ以来の児童書形式のファンタジー翻訳ブームに乗って、昨年出版された。日本版はスドウピウの可愛らしい挿絵が本文を飾っているが、原書の方はデイブ・マッキーン(『バットマンアーカムアサイラム』やサンドマンの表紙など)がイラストを手がけており、かなりダークな雰囲気。なんだかんだ言って、挿絵が本の印象に与える影響は大きいので、和洋双方で、かなり読後感が違うんじゃないだろうか。個人的にはマッキーンの方が合ってると思う(日本語版もこれはこれで良いけど)。
 物語的には魔女にさらわれた両親を助けるために、小さな少女が知恵と勇気で立ち向かう、というもので、割と良くある形式だろう*1。ここはストーリー云々よりも、ゲイマンの端麗な語り口を楽しみたいところだ。少しだけダークでグロテスク、しかし根底には人間性への信頼が息づいているのが、この作者らしいところなのかもしれない。コララインと3人の子どもとの別れのシーンの美しさは心に残る。『サンドマン』が好きな人なら、是非。

*1:自分は『千と千尋の神隠し』を連想した。ちなみにゲイマンは『もののけ姫』のスクリプトの英訳を手掛けている。