「山田風太郎忍法帖短編全集6 くノ一忍法勝負」山田風太郎

くノ一忍法勝負 山田風太郎忍法帖短篇全集(6) (ちくま文庫)
 忍法帖短編全集も6巻目。今回の短編では「淫の忍法帖」が凄い。輪姦され発狂した妻の復讐のために、5人の侍を罠に掛ける主人公。順調に復讐が進み、アレ?と思ったところに、あのオチ!
 スカトロ+永劫回帰という判じ物みたいな組み合わせ(でもオチは何故かほのぼの)な「呂の忍法帖」も強烈。あと「叛の忍法帖」はセクシャルな忍法同士でバトルロイヤルという基本アイデアが、長編「忍びの卍」を思い起こさせて面白い。
 また「倒の忍法帖」の松平上総介忠輝は、その徹底的なモダニストぶりが強く印象に残る。その忠輝がナチス張りの優性思想を開陳し、結局は理不尽な忍法に敗れ去る姿からは、近代と前近代の対置といった構図では終わらない(他の風太郎作品の多くにも存在する)複雑な世界観・人間観を感じさせる。達観と言ってしまうと簡単だが…。
 今回のボーナストラックも矢野徳氏による絵物語(忍者撫子甚五郎)だが、今回は巻末に「バジリスク」のせがわまき氏によるイラストも載っている。実を言うとこちらの方が嬉しかったりして。