ジャスティス・リーグ「より良き世界」:CSカートゥーン・ネットワーク

 本シーズン随一の問題作。明らかに911後の世界情勢を反映したストーリー。
 まず、ヒーローはどんな悪人でも殺してはならないのか?という、ヒーローものに潜む根源的な疑問を扱っている。ある意味死刑制度の是非にも繋がる様な問題だが、結局、最後に「政治家を目指す」と宣言するルーサーのシーン(そのまま冒頭に繋がる構成が巧み)を見ても分かるように、明確な答えは出していない。
 そしてその問いは、そのまま「正義を実現するために、自由を抑圧しても良いのか?」「同じく、正義を実現するために、他の世界(他国)を力で抑え付けても良いのか?」という問いに繋がる。これまた答えは出していない。象徴的なのは「9歳の子供が両親を殺されなくても良い世界」を聞かされたバットマンの態度だろう。
 しかし、結局ジャスティス・リーグは、今までどおりのやり方-ヒーローとしての道-を選択する。これからも矛盾は数多く出てくるだろう。しかしそれでも「ヒーロー」であることを選択するのだし、それこそが本当のアメリカのやり方なんだ。最後にアメリカの国旗を拾い上げるスーパーマンの姿からは、そんな決意も感じられるのだ。
 それにしても、こういうビビッドな問題を取り上げる製作者達の姿勢には、感銘を受ける。アメコミのヒーローものを「力は正義」の様な単純なお話*1だと思っている人は多いと思うけど、そういう人に是非見てもらいたいなぁ。

*1:個人的には、日本のバトルもののマンガの方が、よっぽどそういう傾向が強いと思う。