「SFはどこまで可能か?」福江純

ISBN:4594044174
 「やさしいアンドロイドの作り方」を改題、「空想科学文庫」というシリーズの一冊として文庫化したもの。超光速航法、ESP、不死テクノロジースペースコロニー等について、SFでどう扱われてきたか、そして最新の科学でどこまで判明・実現しているかを、あまりその手の話題に詳しくない人でも分かる様、やさしく書いた本である。元本は1996年に出たものなので、出版後アップデートされた事実については、各章の終わりに1ページほど補遺してある。
 著者の専門は天文学なので、それ以外の分野については、どうしても物足りないものを感じてしまう(これについては、著者も本の中で弁明しているが)。著者自身の「SFを科学する」や、ロバート・L・フォワードの「SFはどこまで実現するか」、金子隆一の「新世紀未来科学」ISBN:4893503952(おススメ!)と比べると、かなりウスい内容と言わざるを得ない。もっとも、対象となる層を考えると、これくらいの内容がちょうど良いのかも知れない。気軽に読めるし、あまり濃過ぎて引かれても不味いだろう。(とは言え、利己的遺伝子についての説明で、よりによって竹内久美子の本をお勧めとして挙げるのは、いかがなものかと思うが…)
 なお、本書の最終章などからは、著者の教育者としての考えも見て取れる(著者は大阪教育大学の教授)。自分も、科学に少しでも興味を持っている子供が、こういう本をきっかけに、更に深い世界に興味を持ち、そしてSFの魅力にも気づいてくれると嬉しいと思う。個人的に「空想科学読本」は好きでは無いのだが、こうしてこの本が関連書籍の一冊として出るのは、意味のある事だと思う。