「山田風太郎忍法帖短編全集3 忍法破倭兵状」山田風太郎

山田風太郎忍法帖短編全集3 忍法破倭兵状 (ちくま文庫)
 「魔界転生」の再映画化に「バジリスク」の講談社漫画賞受賞と、去年くらいからまたまた注目されつつある山田風太郎。まぁ、10年前から「忍法帖傑作大全」「明治小説全集」「傑作大全」「ミステリー傑作選」「妖異小説コレクション」と割と途切れなく出版が続いてきた訳だが、今度はいよいよ忍法帖の短編を網羅する全集のスタートだ。これで「妖異小説コレクション」が第二期以降も出れば、長編忍法帖以外のほぼ全作品が読める、というかつて無い事態に。忍法帖短編全集の後は、長編全集も是非。
 本書で一番印象に残ったのは「忍法鞘飛脚」。憎い女の手足を切り取り、目・耳・舌を潰して「人豚」にするという、この上無く陰惨なシチュエーションを扱っていながら、このオチ!艶笑小話かよ!その他の短編も、無常観とユーモアが渾然一体になった、山風ならではの世界を堪能できる。やっぱり忍法帖は長編より短編のほうが面白いな、と再確認した次第。
 そしてボーナストラックの「忍法相伝64」。まぁ、面白いかと言えばアレなんだが、長編版「忍法相伝74」*1の方も、怖いものみたさで読みたくなってきた。昭和30年代の風俗も、今となっては時代劇みたいなものだ(ガスも下水も風呂も無いアパートとか)。

*1:GQ誌で山田風太郎が長編作品を自己評価するという企画があったが、この作品はABC評価でP。もちろん今だ文庫化もされていない。