「フェッセンデンの宇宙」エドモンド・ハミルトン

フェッセンデンの宇宙 (全集・シリーズ奇想コレクション)
河出書房新社奇想コレクションの一冊。
買うつもりはあまり無かったんだが、装丁が良かったので、つい。でも、思った以上に楽しめた。ハミルトンの短編は、これまでにこの表題作と『反対進化』『プロ』を読んだことがあった。どれも結構好きな短編だ。
集中のベストはやはり『向こうはどんなところだい?』。SF的な状況設定と、成長の過程での普遍的な喪失感がオーバーラップする締めくくりの言葉が良かった。自分はこういうのに、弱い。
30年代に書かれた『凶運の彗星』はさすがに古めかしいんだが、他の短編と一緒になってると、なんとも不思議な味わいがあるから不思議。もっと仰々しい文体ならラヴクラフトの作品みたいな雰囲気になってもおかしくないはずなんだけど。
全体的に藤子・F・不二雄のSF短編を思い起こさせる。60年代に書かれた『太陽の炎』以外はどれも藤子の漫画になっても違和感なさそうだ。『向こうはどんなところだい?』はさしずめ『老年期の終わり』かな。