『時の眼』アーサー・C・クラーク、スティーヴン・バクスター

 巨匠クラークに俊英バクスター、新旧イギリスSFを代表する作家二人による合作。表紙にはクラークの名前が大きく書かれているが、『過ぎ去りし日々の光』同様、実作業としてはたぶんバクスターのウエイトの方が大きいんだろうな。
 タイム・オデッセイ二部作の一作目で、『2001年宇宙の旅』に始まるスペース・オデッセイ・シリーズの「直角編」ということらしい。直角編といっても分かりにくいが、これ一作だけ読んだ感じだと「ジョジョの奇妙な冒険」6部までと「スティール・ボール・ラン」の関係を連想した。モノリスや「月を見る者」等、前シリーズに登場した様々な事物が、形を変えて再登場するのが懐かしい。
 人類200万年の歴史の断片が、パッチワークのように継ぎはぎされてしまう謎の現象「断絶」。この怪現象に巻き込まれた国連平和維持部隊の隊員たちが、本作の主人公だ。野蛮な行為を繰り返してきた人類の本性を見つめたうえで、それをいかに制御し平和を作り出すかが、この物語のもっとも重要なテーマなのだろう。そのテーマを背負う形で「悪役」となっているのが、13世紀のモンゴル帝国軍と、21世紀のアメリカ人女性だというのが、いかにもイギリス人らしい配役。
 アレキサンダー大王VSチンギス・ハーンだとか、まるで架空戦記のノリは楽しいけれども、どうも全体的に「流して書いた」ような安易さを感じるなあ。最後の主人公の帰還方法も、「これでいいの?」と言いたくなるイージーさだし。基本的に謎の核心は全て次作に持ち越されているので、評価としては次を読んでから、ということになるのかな。

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