『コープスブライド』

 ティム・バートン製作による人形アニメ。人形のデザインから背景のセット、画面の質感まで、徹底的に作りこまれた画面、は思わず息を呑む美しさ。特にダークな画面で統一された「この世」が良い(キッチュな「あの世」も楽しいが)。ただ、絵としてあまりに作りこまれすぎてる分、人形アニメ特有の異世界感……現実と非現実の境みたいな微妙な雰囲気を感じにくいのが、個人的にはちょっと残念(CGアニメっぽくなりすぎてる、というか)。
 それにしてもヒロインの描写が、コープスブライド、ヴィクトリア、どちらも素晴らしい! 階級社会のしがらみに囚われたヴィクトリアが、ピアノを通じてヴィクターと心を通い合わせる描写も良いし、牧師館に助けを求めて駆け込むあたりの、情感の盛り上げ方も憎い。このシーンとか、ただのパペットがある種の官能性すらまとう瞬間があるんだけど、これこそ人形アニメの醍醐味だと思う。
 死体の花嫁さんの方は、ヴィクトリアとは対照的な性格ながら、こちらはこちらで可愛らしいです。ヴィクターの目の前で、くるくると楽しげに舞うシーンとか、はっとするほど美しい。最後の「昇天」シーンは言わずもがな。死体なのになあ。目ん玉飛び出したり、頭ん中に虫飼ってたりするのになあ。それなのに、どんどん可愛く美しく見えてくるのが、映画のマジックです。
 ただ、肝心の主役であるヴィクターがいけない。結婚を申し出て、花嫁さんに余計な期待を持たせたりしなけりゃ、もっと純粋に感情移入できたんだろうけどなあ。しかも同情心とヤケクソからの行為だし。三角関係ものでヴィクターみたいな役どころが(視聴者からの好意という点で)割を食うのは、お約束と言えばお約束、それにしても、もうちょっと良いやり方があるだろうに。

ティム・バートンのコープスブライド 特別版 [DVD]

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