『メルニボネの皇子』マイクル・ムアコック

 再刊エルリック・サーガ第一巻。旧一巻『メルニボネの皇子』と旧七巻『真珠の砦』のカップリング。
 『メルニボネの皇子』を最初に読んだのは高校生の頃だったかな。学校の図書室にリクエストを出して購入してもらったような気がする。正直、初読時にはまったくハマらず、続刊に手を伸ばすことも無かった。結局大学生になってから、何かの雑誌で最終巻『ストームブリンガー』における驚愕の展開を知ったのが、このシリーズと本格的に付き合うきっかけととなった。その後は「紅衣の公子コルム」「ルーンの杖秘録」「エレコーゼ・サーガ」「ブラス城年代記」とエターナル・チャンピオン・シリーズを読み漁り、更には古書店を巡って『暗黒の回廊』とか『堕ちた天使』なんてのまで探し出したりしたのだった(『堕ちた天使』復刊求む!)。あれだけ一つの物語世界に夢中になれたというのも今となっては懐かしい。
 さて、こうして再刊を手に取ったのは懐しさ故のことではあるのだけれど、いざ10数年ぶりに読み返してみると、10代だった自分には気付けなかったこと、読み落としたことが次々と見出されて、新作同様新鮮な気持ちでに楽しむことが出来た。思い起こせば当時「指輪」好きな友達から「エルリックは何があっても成長しないから嫌いだ」と言われたことがあっったのだけど……今にして思えば、その友達の言うことがもっともであるということも、また一方ではむしろ「意識的に成長しない男」としてエルリックは描かれたのだ、ということも、どちらも良く実感できる。神話的な存在として、古代人として、亜人間の皇帝としてのパーソナリティと、若者ならではの理想主義や短気さが、一つの人格としてないまぜになっている面白さ、こういうところは当時まったく気付かなかったところだった。
 でもやっぱりアリオッ「ホ」はなあ……なんだかなあ……。

メルニボネの皇子―永遠の戦士エルリック〈1〉 (ハヤカワ文庫SF)

メルニボネの皇子―永遠の戦士エルリック〈1〉 (ハヤカワ文庫SF)