『トリポッド4 凱歌』ジョン・クリストファー

zeroset2005-06-06

 いよいよ人類による「黄金の都市」攻略作戦が始まった。異星人の本拠地への侵入、そして破壊工作は困難を極めたが、ついに……。
 と、いう訳でジュブナイル侵略SFトリポッドもとうとう完結。ジュブナイルといっても、筆致はあくまで冷徹。今回もばんばん人が死にます。イギリスSFらしいなんとも皮肉なオチは、決して明るい終わり方とは言えないが、そんな中にも一筋の希望を残してあるのにはほっとさせられた。
 さすがに執筆された年代が年代だから、古くないなんて決して言えない。特に異星人の弱点を見つけるところ、人類の文明が急速に復活していくところなんかは、ちょっとご都合主義な気がしないでは無い。でも、やっぱりこの面白さは本物だと思う。描写は極めて簡潔で、余計なものは何も無いけれど、貧相では無い。無謀と紙一重の勇気。その代償。軽蔑していた大人がふと垣間見せた、人生の重み。自己犠牲。理想の挫折……。うーん、これだけあれば十分でしょう。
 最終巻は表紙も感慨深め。特にドームの上のヘンリーと顔を覆っている泣いているユリウスが……。
 すれっからしの大人(SFファン)にも、これからSFを読みたいと思ってる「12歳」のキミにも、お勧め。こういうジュブナイルSF、もっと出版されて欲しいですね。

トリポッド 4凱歌 (ハヤカワ文庫 SF)

トリポッド 4凱歌 (ハヤカワ文庫 SF)

今までのトリポッド感想
トリポッド1 襲来
トリポッド2 脱出
トリポッド3 潜入