『ノートルダムの鐘』:CSディズニー・チャンネル

 『ノートルダムのせむし男』のアニメ化作品。初見。
 いやこれには圧倒されたな。正直、ディズニーを舐めてたよ……。冒頭のパリの群集シーンで早くも息を飲まされたんだけれども、人、人、人の人いきれの祭りを上から見下ろす鳥瞰シーン、ダイナミックでしかも精緻。全部動いてる。とにかく絵の密度が凄すぎるよ。
 キャラクターデザインは近年のディズニーとしては珍しく写実志向のもので、これがまた魅力的なんだよなあ。特にエスメラルダ! ディズニー・ヒロインとしては珍しく、お姫様でもお嬢様でも「隣のあの娘」でも無い、大人の女。官能的な肢体に、野生味あふれる浅黒い肌、くっきりした男眉のりりしい顔。う〜ん、素晴らしい。
 しかし、判事フロローの存在感の前には、その魅力もかすみがちだった。それくらい印象に残る敵役なのだ。特に中盤、エスメラルダへの邪恋に身を焦がすシーンは強烈だ。神に向かって邪教徒どもを殲滅することを誓いつつ、その口でエスメラルダへの劣情を告白するフロロー。炎の前で身をよじりながら、あの汚らわしいジプシー女の肢体を自ら縛り上げてやろう、我が物にならぬならいっそ滅ぼしてやろうと誓うこの場面の、あまりにエモーショナルな禍々しさは、ちょっとディズニー映画とは思えないものがある。
 と、思い切り引き込まれた映画なんだけど、残念なことにストーリーに納得できないものが多かった。大体最後、もしハッピーエンドにしたいのならば、絶対にカジモドとエスメラルダを結ばせるべきだった。そうでなければ、悲劇として終わらせるべきだった。その醜さゆえに外界から隔絶した生活を送る青年、カジモド。冒頭、眼下の祭りを見下ろしながら、決して自分を受け入れてくれぬ世界の、そのあまりの美しさにため息をつく姿に共感の涙を流してしまった者としては、この「ハッピー」なラストシーンはあまりにも白々しすぎる。ゴールデン・ラズベリー賞の最低脚本賞にノミネートされたのも当然だと言いたい。
 とはいえ、絵としての魅力、キャラクターの魅力は(あと音楽も)、自分の観たディズニー作品では文句なしにナンバー1。ああ、もうちょっとちゃんとディズニーを見るべきだったな、本当。
(参考までに、淀川長治御大の映画評も置いときますね)

ノートルダムの鐘 [DVD]

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