『アストロシティ:ライフ・イン・ザ・ビッグシティ』カート・ビュシーク、ブレンド・E・アンダーソン

ISBN:4902314827
 『マーヴルズ』のライター、カート・ビュシークによる話題作。架空の街アストロ・シティを舞台にスーパーヒーローと市井の人々の触れ合いを描く。
 う〜ん、面白いけど乗り切れなかったという感じ。例えば、なんで架空の街を舞台にしているのか、という必然性が分からない。細かいことかもしれないけど、ひっかかるとすっきりしない感覚が後を引く。あと、個別の話は面白いけど、こういう傾向の話ばかりまとめて読むと、どこか冷めてしまう自分に気付く……いや、違うか?……もしかしたら疎外感を感じるという方が近いのかな……。自分でも、なんだかこのもやもや感が良く分からない。そういうこともあって、読んでから感想を書くまで一週間以上も間が空いてしまった(それでも全然まとまってない)。実は『マーヴルズ』も乗り切れないところがあったんだけど、ビュシークとは相性が悪いのかなあ。
 でも、ヒーローコミックを当たり前のものとして数多く読んでいる人や、逆にコミックにあまりなじみの無い人間と、自分のように中途半端にアメコミをかじってる人間とは、この本を読んだ感想も違ってくる気はする。おそらく、自分は作者の想定するターゲットから外れてしまってるのだろう。
 上にも書いたけど、それぞれの話は良く出来ているし、キャラクターも魅力的だ。個人的に気に入ったキャラは、ベタかもしれないけどジャック・イン・ザ・ボックス。いやぁ、カッコいいです。割とまじめそうな素顔との落差もいいし、なんと言ってもズームパンチがね。
話として印象的だったのは、冒頭のサマリタンの話に、クラッカー・ジャックの話。崇高さと卑近さ、どちらも人間の本質だとしたら、ヒーローと一般人を分かつものとはなんなのだろう。
 ちなみに『アストロ・シティ』のアメコミの歴史における意義については、id:boxmanさんのid:boxman:20050113から始まる一連のエントリが参考になります。