『憲法対論―転換期を生きぬく力』奥平康弘、宮台真司

憲法対論―転換期を生きぬく力 (平凡社新書)
 憲法学者の奥平氏社会学者の宮台氏の、日本国憲法を俎上に上げてのダイアローグ。立場の違う者同士が話し合うことで思わぬ方向へ話が転がったり、お互いの気がつかなかった問題点が浮き上がったり……そういうのが対談の面白さだと思うんだけれども、この本にその種の面白さを期待すると思い切り肩透かしを食らう。はっきり言って話が噛み合ってないんだもの。特に最初の章は長々と自説を展開する宮台氏に対して、奥平氏は終始困惑しているだけの様にさえ見える。
 実を言うと、それぞれの話自体はそれなりに面白い。日本人を「情にほだされ、意気に感じる」「お祭り好き」の民族と規定し、他者に利用されること無く思い切りハレの場を楽しむためにも、むしろ今こそ「近代」を徹底する必要があるとする宮台氏の言には個人的にも共感できる(各論的には賛成できないところもあるけれど)。奥平氏の方は旧来のいわゆる左翼的な主張を繰り返している様にも見えるが、憲法というものの役割について再確認させてくれる点では、ありがたい。
 それだけに余計、対談という形式に必然性が感じられ無いのが辛いところだ。もっとも法律学の知識があれば、この二人の対談からまた違うものを読めるのかもしれないけれども……新書の対象読者は、自分の様な門外漢だろうしなぁ。