Cartoon Crazys - Banned & Censored

Banned & Censored [DVD]
 いつも楽しく読ませてもらっているyutiruさんのブログhttp://d.hatena.ne.jp/yutiru/20041206#p112月6日の記事を見て購入したDVDがこれ、30年代〜40年代のカートゥーン作品集。「上映禁止と検閲」というタイトルだが、これらの作品が当時実際に上映禁止にされたと言うわけでは無いようだ。要するに「現在ではアブナイ表現を含んだカートゥーン」という程度に解しておくのが良いだろう。多くは黒人差別ものだが、中にはリトルキングの出る"Christmas night"の様に「男同士で風呂に入るのは同性愛を想起させる」などというバカバカしい理由のものもある。しかし収録作品自体は、なかなか他では見られないような珍しい作品が多数入っており、値段のことを考えるとお徳かも。これで画質がマトモで(明らかに元フィルムじゃなくビデオからのダビング)、変なステレオ音声処理が無ければなあ。
 収録作品中一番知名度があるのがベティ・ブープものだろう。"Be Human""Ha Ha Ha!"は前に視聴済みだが、"Making Stars"は初見だった。"Ha Ha Ha!"は筒井康隆ベティ・ブープ伝』で高い点数が与えられており、唐沢俊一も『世界のアニメーション』でベストに選んだ傑作。ただ、個人的にはあまり面白いと思いません("Is My Palm Read"とか"Betty Boop M.D."の方がずっと好き)。他二本は後期の作品なので、ひどく退屈だ。"Making Stars"での、他の赤ん坊には哺乳瓶を与えてるのに黒人の赤ん坊にはスイカをあてがっているという酷いシーンには、さすがにドキッとするが。
 一方、恐妻家で子供っぽい王様が主役のシリーズ、リトルキングものの一本"Christmas night"はまったく期待せずに見たのだが、思わぬ拾い物だった。クリスマスの夜、意気投合した二人の浮浪者を宮殿に連れ帰る王様。サンタクロースを迎えるため皆で風呂に入って綺麗にし、靴下がボロボロなので王妃の靴下を拝借して吊り下げる。サンタはおもちゃの車(と言っても人が乗れる)をプレゼントにくれた。そして皆で車に乗って心行くまで遊ぶのだった……筋だけ書くと何が面白いのか分からないだろうけど、とにかく良かったんだよ! 前にトルンカの作品の感想でも書いたけど、こういう、いわば「筋金入り」のほのぼの話には、弱い。
 プライベート・スナフ・シリーズは軍の作った戦意高揚アニメ。"Booby Traps"では「爆弾入りピアノを弾くけど、音程が外れててなかなかスイッチのキーを押さない」という定番ギャグがある。"Spies"では眼鏡出っ歯の日本兵が登場。いかにも戦意高揚アニメらしい描き方だが、良く考えたら『ジェニーはティーン☆ロボット』とかでも相変わらずこんな日本人描写をしてる訳で、この手のカリカチュアには慣れたつもりでもさすがにちょっとウンザリする。
 "In a Cartoon Studio"はアニメ制作会社を舞台とした、楽しい短編。猫のモデルが少しずつ動いていくのをアニメーターがスケッチ、書いた動画をパラパラまんがの要領で見ていると、合わせてモデルも同じ動きをする、という微笑ましいシーンが好きだ。
 他にも、20分もある野菜会社のCMアニメ"Easy Does It"(リアル調のキャラがこの中では珍しい。悪漢がヒロインの体を眺め回すシーンのいやらしいこと)。野菜キャラによるほのぼのアニメかと思いきや、ジャガイモ警官による容疑者拷問シーンにびっくりする"Fresh Vegetable Mystery"。唖然とするほど酷い黒人描写とノリの良い音楽が印象深い"Scrub Me Momma with a Boogie Beat"等、バラエティあふれるカートゥーンを13篇収録している。