『イジー・トルンカ作品集2 チェコの古代伝説』:CSシネフィル・イマジカ

イジィ・トルンカ作品集 VOL.2 [DVD]
トルンカの長編人形アニメ
とにかく人形の表情がノーブル、だけどどこか色気があって引き込まれるものがある。特に、あの眼! スチル写真で『真夏の夜の夢』とか『バヤヤ』とかの一シーンを見て魅力的な人形だな、とは思ってたけど、動いて更にライティングによる演出が加わると本当に鮮烈だ(『チェコの四季』ではディフォルメされた人形なのであまりそういう感じは受けなかったのだけれども)。
特に女王リブシェの側近の女が、木に縛られたふりをして男を騙すシーンの、なんと艶っぽい事か。ちょっと人形とは思えないほどの・・・・・・いや、人体を抽象化した人形だからこその魅力なんだろうなぁ、やっぱり。ちなみに女たちを率いていた黒髪の女戦士も良いです。こちらは毅然とした魅力。
人形アニメとは思えないほどモブシーンの多い映画だけど、終盤の蛮族との決戦は圧巻。王の身代わりとして、命を賭して敵と戦う勇敢な召使。影から戦いを覗きつつ、人知れず逝ってしまう気弱な王。自らの主の死に、空へ吼える狼男。気高く野蛮で熱情的な、民族の叙事詩を描写するためには、造形も動きもストーリーも抽象的にできる人形アニメという映像表現が最適なのかもしれない。