『シュヴァンクマイエル短編集1』:CSシネフィル・イマジカ

クレイ・アニメやコマ撮り技法などで、摩訶不思議でシュールな世界を創造するチェコの巨匠、ヤン・シュヴァンクマイエル監督。検閲などで改変された作品も、すべて監督の意思通りに復元したオリジナル・ヴァージョン。本国チェコや他の国でも見ることのできない貴重な短編集。

仮面をつけた紳士たちが舞台上に現れ、手品を披露しあう。監督のデビュー作。(「シュヴァルツェヴァルト氏とエドガル氏の最後のトリック」)
バッハの曲に合せ、脚本を使わず即興的に撮影した作品。(「J.S.バッハ―G線上の幻想」)
人目を避けて一軒の家にやってきた男。その家を覗き込むと…。(「家での静かな一週間」)
久しぶりに会った友人の家に招かれる男。郊外のありふれた家だが。(「庭園」)
幻想小説について解説を行う学者の男。古文書の挿し絵が動き出す。(「オトラントの城」)
鏡の国のアリス』に登場する怪物、ジャバウォッキー。詩の朗読は、監督の娘。(「ジャバウォッキー」)
http://www.cinefil.co.jp/

ヤン・シュヴァンクマイエル「ジャバウォッキー」その他の短編 [DVD]
何週間か前に録画したもの。最初の「シュヴァルツェヴァルト氏〜」(1964)と「J.S.バッハ〜」(1965)が自分的にまったくピンと来なかったんで放置してあったのを、今頃観たわけだが。
しまったなあ。最初の二つ以外は結構面白かったよ。こんなことなら『2』の方も録画しとくんだった。
一番気に入ったのは「家での静かな一週間」(1969)。基本的には白黒なんだけど、男が穴を開けて覗き込む部屋だけはカラーで、コマ撮り撮影によりシュールな情景が展開している、という趣向。無音のコマ撮りシーンといい、実写シーンのフリッカといい、禍々しい雰囲気が全編に横溢してるんだけど、なぜか観終わった後はほのぼのとした雰囲気になるのが不思議だ。
「庭園」(1967)は非アニメーション。生垣代わりに人間を立たせている男の話。当時の共産主義政府への批判が、一番ストレートに出てる話かも。
「オトラントの城」(1979)も良かったな。白黒実写でドキュメンタリー風に学者の語りが映され、カラーの切り紙アニメで中世の巨人伝説が語られる。巨人とは語り手の学者だったのか。メタフィクションだけど、この短編集では一番筋が通ってる、というのが面白い。7年もの映画制作禁止措置が解除された直後の作品だからかもしれないけど。
「ジャバウォッキー」(1971)は同監督の長編『アリス』を髣髴とさせる短編。題材のみならず、人形とか、おが屑が内臓(または血液)の様に噴出するシーンとか、同一のイメージが散見される。朗読は監督の娘なんだが、イメージ的には息子と父親の関係を描いてるようにも見える。人形が人形を食うシーンが印象的だ。『アリス』は少々だれたけど、これくらいの長さならシュールな光景の連続でも面白く観ることが出来る様に思う。