「荊の城」 上・下 サラ・ウォーターズ

荊[いばら]の城 上 (創元推理文庫)

 19世紀イギリスを舞台にしたサスペンス。
 ロンドンに住む17歳の孤児、スゥ。彼女はある詐欺師より、莫大な遺産を相続した世間知らずの令嬢、モードから財産を騙し取る計画を持ちかけられる。侍女に扮し、令嬢に接近するスゥ。しかし彼女は、あまりにも純真無垢なモードに惹かれ、ついには愛するようになってしまう。モードを破滅させる、冷酷な計画を胸に秘めながら。
 とにかく面白い!途中で止めることができずに土日で一気に読んでしまった。こんなの、久しぶりだ。
 因縁で繋がれた二人が、愛し合い、引き裂かれ、憎しみ合い…という筋立ては大時代的なんだけど、不思議と古い感じがしない。それは、ビクトリア朝ロンドンの猥雑さを伝えてくれる緻密な描写(やたらおまるや便所の描写が多かったりするんだが、それがまた独特の生活感を出してたり)と、登場人物のエネルギッシュさ故なんだろうな。でも下品な感じはしない。
 あと、スゥもモードも精神的にムチャ強い。格好良いね。主人公含め登場人物のほとんど全員が悪党で、結構陰惨なシチュエーションも多いのに、読後感がさわやかなのも良かった。