マイケル・デュドク・ドゥ・ヴィット特集(上映とセミナー):広島国際アニメーションフェスティバル

 前回の広島アニメフェスでグランプリを受賞した「岸辺のふたり」のドゥ・ヴィット監督http://dudokdewit.com/の主要作品の上映と講演。
コマーシャル作品集 コマーシャル用のアニメーションを8〜9作品ほど上映。印象的だったのは、やはり「岸辺のふたり」を見たクライアントから依頼されたという二作品。またフォルクス・ワーゲンのCMで、夜明けと共に少しずつ変化していく空の色を描いた作品も美しかった。
トム・スウィープ(1992年) 掃除人トムが綺麗にした道路に、通行人が次々とゴミを捨てていく。トムはゴミ箱を持って右往左往、という話。とても楽しい作品で、会場から頻繁に笑い声があがっていた。監督によると、チャップリンのサイレント喜劇を意識した作品で、当時の映画同様、舞台的な固定されたカメラワークを心がけたとのこと。でもぐりっぐりっとズームイン/アウトするのは、対照的にデジタルっぽくて面白かった。簡略化されたキャラクターと筆のようなタッチの描線は、既にこの作品で確立されている。ちなみに、監督によると、自分が影響を受けた芸術家の一人に、日本の北斎がいるとのこと。
お坊さんと魚(1994年) どことも知れぬ場所にそびえ建つ僧院。僧院の貯水池に魚を見つけたお坊さんは、捕まえようと追いかけているうちに・・・。幻想的なラストシーンが印象的。僧院の巨大さ、明るい日差しに長く伸びる影、と空間構成がすごく美しい!お坊さんの跳ねるような動きはギャグっぽい(会場からの質問でもヴィット作品には跳ねる様な動きが多い、との指摘があったが、監督によれば意識した事は無いとのことだった)。が、全体的には、どことなく哲学的(禅問答的?)で静謐な雰囲気を出している作品。また「この会場(当セミナーの行われているホールのこと)にいるお客さんが、それぞれ最適な位置を探して座っているように」自分も作品の空間配置には特に気を配っている、との話には納得。音楽について会場からの質問に答え、映像との完璧な調和を作るため、音楽家との意思疎通には気を使っているので、例えば音楽家が思わぬ曲作りをしてしまって困惑したり、逆に音楽の方からインスピレーションを得て映像のほうが変化する、などと言う事は無い、とのことだった。
岸辺のふたり(2000年) この作品だけDVDで視聴済み。しかし大きな画面で見るとやっぱり良いですな。DVDで見たときは、音楽が感傷的過ぎる様に感じられたが、大画面・多人数で見てると全然気にならなかったのが、ちょっと面白い。色味を抑えた美術は、改めて美しいと思った。
 監督の話は基本的な技術の話が多く、語り自体もあまり上手いものでは無かった(話の要点が分かりにくい)ので、ちょっとだれた感じがしたのは残念。でも、とても人柄の良さそうな人でした。(どうでも良いことだが、最後に通訳の方が「本当に」を「ホンマに」と言ってしまい、会場で爆笑が起こったという珍事があった。いや、本当にどうでも良い事だけど、面白かったもので)