『平然と車内で化粧する脳』澤口俊之, 南伸坊

平然と車内で化粧する脳
 2000年に出版され話題を呼んだ本。「なぜ日本人は恥知らずになったのか」ということを脳科学の観点から説明しよう、という趣向の対談本。
 いみじくも南伸坊が本文中で述べているように、この本のキモは「『恥を知る人間になるためには躾が重要』という当ったり前の、そしてオッサンの説教めいた結論」を、脳科学の衣を借りて語る面白さにある。ただ、その手法が牽強付会にしか見えないのが大問題なのであって、このあたりについてはAmazonの書評で山形浩生が指摘しているとおりだと思う。ただ竹内久美子なんかと違ってちゃんとした専門家が書いているだけあって、脳科学に関する記述は結構面白い。南伸坊の聞き方が上手くて、対談も平易なのですらすら読めるし、「分かった上で」読むなら結構楽しい本だと思う。

追記(2017年10月19日)

 さすがに今では「分かった上で読むなら楽しい」などという微温的な見方はしていない。結局のところこういう態度が、ニセ科学を蔓延らせる元凶の一つにもなっているのだろう。